みやけばなし

高円寺でギター弾いてるやつの日記

顕微鏡のレンズが大事なキツネと距離のはなし(2017年1月20日)

 人間関係の、微妙な距離の引き離し方がわからない。

「あなたのことは嫌いではありませんが、一緒に飲みに行ったり出かけたりはしたくない」と伝えるのはとても難しい。理由をつけて何回も断ればいいのかもしれないが、その理由にも限りがあると思う。決めつけずにまずは飲みに行けばいいのかとも思うが、1度飲みに行ったら次はもっと断りにくくなってしまうのは目に見えている。

あと、LINE交換も断れない。何といえばいいのかわからないから、交換した後でメッセージが来ても既読無視することになってしまう。みんなどうしているのだろう。

 フルタイムで働いていると、基本的には休みの日にしか遊べない。月の休みの日を10日と仮定して、毎週金曜はブログや絵を描くのに使っているから残り6日、家事や買い物や行きたいところに出かけたいという用をこなすのに4日使ったら、残りは2日だ。つまり、月に2日しか人と遊ぶ余裕はない。2日しかないなら、一緒にいて楽しい人と過ごしたい。なのに「どうしたら友人ができますか」という悩み相談はよく見かけても、「どうしたら友人を増やさずに済むか」という悩みは見たことがない。

 人と人との距離は近ければいいというものではないと思う。顕微鏡のレンズと同じで、相手がはっきり見えるちょうどいい距離というものがあって、近すぎても遠すぎてもよく見えないということが出てくる。適正な距離を保つことが大事だ。問題は、相手から見た適正な距離と自分から見た適正な距離が違う場合に生じてくる。私は、人間として平均よりだいぶ『遠視』だということになる。

 自分を知ってもらおうとしたり、プライベートを無理やり聞き出して自分の重要性を相手にアピールして『近づく』ことと、『仲良くなる』ことはちがうんじゃないか。私は、人に『近づこう』とする人よりも、「自分の本業に夢中になっていて仕事の話をしている時でも本業に絡めて話してくるからよほどそれが好きなんだなあと伝わってくる人」とか、「何を考えているかわからないけど私が本を読んでいても隣で黙って放っておいてくれる無口な人」とか、「声の調子がちょうどよくて当たり障りのない会話だけを歯切れよく間のいい距離で交し合える人」のほうが、「一緒に飲みに行ったら面白そうだなあ」と思う。

『しんぼうが大事だよ。最初は、おれからすこしはなれて、こんなふうに、草の中にすわるんだ。おれは、あんたをちょいちょい横目でみる。あんたは、なんにもいわない。それも、ことばっていうやつが、勘ちがいのもとだからだよ。一日一日とたってゆくうちにゃ、あんたは、だんだんと近いところへきて、すわれるようになるんだ……』(『星の王子さまサン=テグジュペリ・作/内藤濯・訳より、キツネ)

 幸いなことに、私にもキツネのような友達が何人かいる。今いるキツネを大切にしたい。

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