みやけばなし

高円寺でギター弾いてるやつの日記

安心な僕らは旅に出ようぜ(2020年11月8日)

 このタイトルをブログに掲げられるような世情になって本当に良かったなと思う。

 今年の6月、緊急事態宣言は解除されたがまだ自粛ムードが強かった頃、私の直属上司である係長が九州旅行に行ったことを人事課に咎められて始末書を書かされる事態になった。なぜバレたかというと、宿泊助成費というホテルのレシートを提出すると1泊あたり5,000円もらえる制度を使おうとしたかららしいだが、機嫌を損ねた係長はそれから仕事に来なくなってしまい、今も出勤していない。人事は自分達が強く言い過ぎた負い目があるのか人員を配置してくれることもなく、私達の部署はこれからどうなるんだろうと思いながら日々の業務に追われている。

 一方私はと言えば、実はコロナで街が死んでいた8月に新宿のBOOK AND BEDという本棚の中で泊まれるホテルの年パスをクラウドファンディングで入手しており、予定のない土曜の夜は毎週そこで過ごしている。人事が知ったら卒倒しそうだが、知ったことではない。閉じこもっていたら人生は終わってしまうのだ。

 「何故を旅をする必要があるのか」と考えたときに、「別にしなくてもいいよな」と思った人がたくさんいるのだろう。

 特に旅好きでない人でも、バスケのピボットの動きのように今いる場所を軸にして移動することで、普段の自分の生活を新鮮なもののように感じることができる。しかし今いる場所に満足していて、そこが自分の場所だという確信を持って生きている人にとっては、旅をする必要性があまり感じられないのだと思う。人生に問題がない人が本を読もうとしないのと似ている。

 私達は何故生まれてきたかもわからないまま生まれてきて、わからないまま苦しみ、そして死んでいく。旅をしてみてもきっとわからない。

 ただ旅をすると、その土地で暮らしている人がいる。旅行先のお土産屋で働いている人がいる。

 その人にも生活があって、どこでも人間はみんな似たりよったりの仮りそめの生活をしていて、どうしようもないのは自分だけじゃないんだなあと安心したりする。タイトルと逆になってしまうが、不安なときほど旅がしたくなる。

 もっとみんな旅に出よう。旅が難しいなら、本を読もう。今の自分には、この閉塞感に対して提案できることがそれくらいしかない。