みやけばなし

高円寺でギター弾いてるやつの日記

2022年8月5日北海道ツーリング留書(最終日)帯広→新千歳

 朝、宿の人が作ってくれた手作り弁当をテラスで朝食としていただいた。ここのオーナーはいろいろと気を回してくれつつも適度に放っておいてくれて、本当にいい感じの人だった。

 

 宿の看板犬、モモちゃん。ものすごく人懐っこくて、知らない人のはずなのに飛び掛かってきてペロペロされてしまった。ボールやフリスビーで戯れてもらった。可愛い。

 

 

 宿の人との別れを惜しみながら出発。この日は五日間で一番天気が良かった。雨が降っていないだけでも快適さが爆上がりなのにさわやかさも加わっていよいよ最高だな…と思っていたら、山道で蝶やコガネムシがヘルメットや体にガンガンぶつかってくるようになった。ヘルメットのシールドに何度もコガネムシが当たって砕け散り、黄色い汁で視界がリアルスプラトゥーン状態になった。やはり一筋縄ではいかない。

 

十勝川。川が広大なのでその河川敷もものすごく広く、芝刈り機で整備をしていた。

 

夕張メロード。夕張メロンは高くて嵩張るので買えなかったが、メロンソフトとカステラの切れ端を買った。メロン熊のトラックもいた。

 

畑にものすごい規模で玉ねぎが転がっており、それがショベルカーみたいなので集められて、積まれていた。

 

巨大コーン迷路。時間がかかりそうだったので入りはしなかったが、高さが3mくらいあり、十分迷路として機能していそう。

 

別の場所だが同じような感じでひまわりの迷路もあった。旅の終わりを感じてかなり寂しくなってきた。

 

 昼飯は近くの店へスープカレーを食べに向かったが、ラストオーダーの時間を過ぎてしまっていたので、やむなくガソリンを入れてバイクの発着所へ戻った。

 

 無事に帰ってこられたという安堵と、もう終わってしまったのかという信じられなさで胸がいっぱいだった。五日間の走行距離は1162.9km。東京から福岡までの距離より長い。Gooseも本当によく頑張ってくれたと思う。

 

 

 飛行機は夜に出るので、新千歳空港を思う存分歩き回った。お土産屋もじっくり見て回れたし、スープカレー(夕食)とエビそば(シメ)も食べた。よく食べよく走った。

 

 帰りの飛行機は席を予約していなかったのになぜか窓際がとれたため、ありがたく窓際に座らせてもらった。ほとんどの時間はライトの明滅で現れたり消えたりする左翼を見ているだけだったが、山間部の道路や町が葉脈状に光っていたり、茨城県の海岸線の光と利根川部分が暗くなっている等地形の形が良く見えた。

 

 そして横浜の方に向かうと、「ああ、これが今から帰る街か」という、何とも言えない呆れのような感情がわいてきた。光が多すぎて土地全体がまぶしく光っていて、今や左翼もはっきり見える。人と家とビルと車と街灯がひしめきあっている。自分はいつもこの中にいるから、自分がすぐよくわからなくなるのかもしれないなあと思った。



 成田空港近くのカプセルホテルまで、やたら街灯が明るい夜道を歩いた。

 

 旅の中であったことを話し合いながら、「旅行ではなく、『旅』だった」「最初は大変だったけどそれもかえってよかった」「本当にあっという間だった」「絶対にまた来よう」という意見で一致した。

 

 カプセルホテルの廊下からは会話禁止だったためほとんど喋れなかったが、朝4時30分に起きて支度をし、早朝の飛行機で次の飛行機に乗るF氏を見送った。一人だったら絶対に達成できなかった。まず初日も次の日も「じり」の時点で心が折れて宿を全部キャンセルして引きこもるか、決行しても電波が入らなくなる山道で迷うことを懸念して道の駅くらいにしか立ち寄らなかったと思う。本当にF氏様様です。

 

 

 【あとがき】

 今回の旅で学んだことはたくさんあるが、一番は「北海道の山で滑ったら死ぬが、滑って死ぬことは人生でそうそうない」ということだ。霧で2台前の車も見えない中で、カーブのある道を、雨水と強風で凍えながら走り続けるという、常に「滑ったら死ぬ」という状態で何時間も走り続けたので、人間ちょっとやそっとのことでは死なないという度胸がついた。「みんなもぜひやってみてね!」とは到底言えないけど(試練すぎる)、こんなにあっという間に5日間が過ぎたことは初めてで、間違いなく今までで最高の旅だった。

 

 また、バイクの整備士さん、お土産屋さん、ガソリンスタンドの店員さん、民泊のご夫婦等、北海道に住んでいる人にたくさん会ったが、みんな優しかった。飛び込んでいっても、包容力がある。これからは今まで行ったことがない場所にどんどん出かけて、人に会おうと思った。帰ってきて、自分の部屋が本で溢れていたけど、家や図書館で本を読んでいても、直接体験した情報の0.01%も摂取できないとわかった。本は好きだからこれからも読むけど、自分は頭でっかちになっていたと痛感している。世の中にはいろんな働き方をしている人がいて、みんな生きていける保証がない中でそれぞれに頑張っているのに、自分だけが不安なような気がしていた。

 



 人生は辛いことばかりじゃないし、辛いことがあるから人に助けを求めたり、人の痛みがわかるようになったりして、より人と繋がっていけるんだと思う。折しも帰宅した日の夕方、緑内障のレーザー治療の効果測定があり、眼圧の低下に効果が出ているという結果だった。不安を拭い去れないときは脚元をよく見て、余裕があるときは景色も楽しみながら勇気を持って進んでいきたい。

 

 最後に、F氏には本当にお世話になりました。絶対にまた北海道に来るためにも、元気でいて、お金が貯められるだけの稼ぎと連休がとれる仕事に就きます!

 

(終)