みやけばなし

日々の記録とフラッシュフィクション

【超訳/脳内字幕】Cut/The Cure(2024年6月21日)


大学時代にMy Chemical Romanceのコピバンライブをした後、マイケミのこともV系のことも詳しくない人から「これってヴィジュアル系バンド?」と聞かれた。たぶん当時の私がV系ばかりコピーしていたからだろう。そのときは「違うよ、洋楽だよ」と即答してしまったのだが、そのときから引っかかっていることがある。

 

V系とは、何をもってしてV系になるのか?

 

マキタスポーツ氏によると「ビジネスモデル」と解釈されていて(*注)、それは私もそう思う。実際V系の全盛期には「V系として出さないと売れない」という理由で全然V系じゃない筋肉少女帯までV系としてカテゴライズされた歴史があるそうなので、それは事実だ(今でもCDコーナーやサブスクのカテゴリで筋少V系の棚に並んでいると複雑な気持ちになる)。

ただ、V系バンドの曲の中でも「この曲はV系っぽくない」「これはいかにもV系って感じだよね」というのがファンの共通認識(ゴールデンボンバーの『†ザ・V系っぽい曲†』が詳しい)として存在し、その中でも「歌詞が全部英語だとV系ぽくない」というのは何となくある気がする。

 

しかし洋楽なのに初見で「いやこれはV系だろ」と思った曲がある。それが今回の『Cut』だ。「紅に染まったこの俺を慰める奴はもういないじゃん」と。歌詞だけではなく、外見もコーラスもギターリフもドラムパターンも、何もかもV系っぽい。

違う。今思えば逆だったのだ。V系バンドで「The Cureから影響を受けた」と公言しているバンドはいくつもある。The CureV系っぽいのではなく、V系The Cureっぽいというのが正しい。リングイネやタリアテッレやラザニアをパスタと呼んでも、パスタの元である小麦粉や塩をパスタとは呼ばないのと似ている。

 

その辺も踏まえながら、今回の翻訳はいつもはボーカルのロバート・スミスの印象から一人称を「僕」としているところをあえて「俺」にしてみている。前置きが長くなってしまった。言いたいことが伝わるといいのだが。

 

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Cut/The Cure

お前がそんな風に俺に話しかけなければ

お前が聞き入るように話しかけなければ

壊れる心

落ちてくる空

情熱は冷め

友情は消える

俺が今もお前を思うように

お前も俺を感じてほしい

 

 

お前がそんな風に俺を見なければ

俺がお前を見たとき見返してこなければ

凍りつく顔

冷たい瞳

甘い噓をつく唇

俺が今もお前を思うように

お前も俺を感じてほしい

 

だが今はもう

お前は何も感じていない

お前は気にも留めていない

全ては終わった

 

 

お前がそんな風に俺の手を引かなければ

俺がお前といるときそんなやり方で引き寄せなければ

救いの望みを逃れた手が

意味もなくお前を求めてる

俺が今もお前を思うように

お前も俺を感じてほしい

 

だが今はもう

お前は何も感じていない

お前は気にも留めていない

全ては終わった

 

 

お前がそんな風に俺に話しかけなければ

俺を見なければ

引き寄せなければ

だが今はもう

お前は何も感じていない

お前は気にも留めていない

全ては終わった

 

訳していて思ったのだが、Doing the Unstuckのときに書いた「狂っている自分とそれを見ている自分の二つの視点があるように感じさせる歌詞」というのは、The Cure特有の特徴というより「V系っぽさ」の本質なような気もしてきた。見世物小屋感というか。いや、見世物小屋感と完全にイコールっていう感じでもないし、V系じゃないバンドでも見世物小屋感を醸し出してるアーティストはたくさんいるから、十分条件じゃなくて必要条件くらいかもしれないけど…。完全に感覚の話で申し訳ない。また何か思ったことがあったら書きます。

 

【*脚注】

マキタスポーツpresents Fly or Die「矛と盾」インタビュー マキタスポーツがV系アーティストになった理由 (2/3) - 音楽ナタリー 特集・インタビュー