プールの授業は嫌いだったが、プールそのものはそこまで嫌いではなかった。
入るまでが嫌なのだが、入ってしまえば全身はよく見えなくなるし、水は涼しくて気持ち良い。全身をまんべんなく動かすので消費カロリーも高く、すっきりするし体にも良い。一人で泳げば結構楽しいということだ。
学校のプールは芋洗いだから、泳ごうにも前後の間隔を保って泳がなければいけない。無理なペースで泳ごうとすると息があがる。息があがると鼻に水が入ったり水を飲んだりする。それでプールが嫌になるのだ。クラスを半分ずつに分けて入れられないのか。
プールに通うには、水着と、水泳帽と、ゴーグルと、タオルがいる。そしてそれらを入れるためのプールバッグがいる。このプールバッグの質感が何故か好きだった。あの半透明なキュッキュしたビニール素材の安っぽい袋に、マント型のアニメキャラの絵とかがでかでかと描いてあるバスタオルを入れる。持っている子供の髪は半乾きで、肩にフェイスタオルをかけていて、塩素のにおいがする。そういう全体的な空気は嫌いではなかった。
この季節、梅雨が明けかけたころになるとプールバッグを持った子供が出没するようになる。だからといってどうということもないのだが、半分溺れながら必死に列を乱さないように泳いでいたことを思い出す。本当は、死なないための泳ぎなら、みんなと同じ速さで泳ぐよりも、より長い時間、長い距離泳げるよう方法を教えたほうがいいんじゃないか。その方がきっと楽しいし、ためになるんじゃないかな…