みやけばなし

日々の記録とフラッシュフィクション

天空に浮かぶ地図(2017年6月16日)

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 道を覚えられない。もともと物覚えが悪いというのもあるのだが、ここを右に曲がって左手にアレがあって、というのをいちいち覚えようとしながら歩く習慣がないのが大きい気がする。

 住んでいる街について「じゃああの店行ったことある?」と聞かれて、「ある」と答えた後、「どこにあるの」と聞かれて詰まる、ということが多発する。行ったことはある。しかし、口頭で説明できないのである。だいたいいつも『あの辺り』の道へ入れば見覚えのある角が見えてきて、そこを進むとあるからまあ行けばわかる、というような認識で行ってしまっている。だから、最低でも5回以上行かなければまず道を覚えられない。

 私の頭の中の地図というのは曇り空のように霞がかかっていて、その雲の海の中に知っている店やら人の家などがラピュタのように浮かんでいるような状態になっている。だいたいどの辺にあるかはわかるが、そこまでの経路がわからない。バイクのときはもっとひどい。バイクで移動中は交通ルールを守ることに精一杯なので、全く道を覚えられない。GoogleMAPの音声案内の言うなりに右往左往するだけなので、ほとんどどこでもドアで移動したような感覚になる。

 これらの大雑把すぎる方向感覚は、私が幼少期長い川が町を横切っている土地で暮らしてきたせいかもしれない。迷子になっても適当に歩き続けていればどこかの川に出る。あとは川の太さを見て、川沿いに上るなり下るなり歩いていけば川沿いにある家に続く道に出るのだ。これは今も大して変わっていない。今住んでいる街には市を大きく貫く広い道が通っていて、バイクで走っていて道がわからなくなっても、まっすぐ走っていれば市内にいる限り絶対にいつかその道にぶつかるので、家に帰れるのである。

 もし将来引っ越しをするなら、川のあるところが良い。しかし、今住んでいる土地が気に入っているので、もうしばらくここにいてもいい気がしている。せめてその辺で配っている商店街MAPなどを見て、少しでも脳内MAPの霞を取り払っていきたい。