みやけばなし

高円寺でギター弾いてるやつの日記

存在しない猫の走馬灯(2023年10月29日)

生き物を飼いたいとあまり思えない。一人暮らしだからというのもあるが、そもそも「自分の家で一生を終えて幸せだと思ってもらえるか」というところに自信がない。生き物を見たいときは川に行く。川にいる鴨やサギは飼われているのではなく好きでそこにいるので、心が落ち着く。

飼われている動物というのは不思議な状態だと思う。基本室内飼いの動物というのは、その家以外の外界を知ることなく一生を終える。人間は他人とすぐ比較するし、気に入らなければ裏切る。しかしペットには「この飼い主より隣の人が良かった」とか、「この家より公園で暮らしたい」とか、そういう選択肢はない。選択肢がない中で生活の内に生まれる感情や愛情の全てを飼い主にぶつけてくるのだから、良くも悪くもペットが飼い主に与えてくる影響というのは相当なものだろう。そして運良くペットから愛されてしまったら、その純粋な愛情に心が耐えられなくなると思う。

猫を一度も飼ったことがないにも関わらず、猫をもらって一緒に家に帰り、猫の餌や設備を買って設置し、仕事から帰ると猫がおり、猫と遊び、たまに無視され、猫はだんだん具合が悪くなり、猫が動かなくなる日が来る、その一連の流れを思い浮かべただけで涙が出てくる。現実に飼うなんてことをして猫が死んでしまったら、何をもってしてもその穴を埋めることはできないだろう。せめてこの世の猫達がたくさん美味しいご飯を食べられて、温かい寝床で寝られて、安らかに死んでいけるといいなと祈るばかりである。