みやけばなし

ギター、料理、その他の日記

ひと手間のロマン(2015年12月16日)

チェーンの定食屋(なか卯ではない)に入って鯖の塩焼き定食を頼んで驚いた。骨が抜かれている。ええっと思った。自慢だが、私は焼き魚を綺麗に食べられる方で、食べる時は毎回「まず背と腹の間に箸で切れ目を入れて上の身を食べて背骨を外して…」という行程を楽しみたくて魚を食べている節が三割くらいあるので、がっかりした。確かに骨がない方が食べやすいかもしれないけど、工場とかで誰かが頑張って骨を抜いてくれてるのかなとか、抜いた骨はどうしたんだろうとか、そういうことを考えると「抜かないで欲しかったなぁ」と思う。
 枝豆は一粒ずつ手で押し出して食べるから枝豆なんだと思う。枝豆があらかじめ全部押し出してあって、丼に盛られて出てきたら、それは枝豆ではない気がする。枝豆ご飯は美味しいけど、枝豆の美味しいところは、さやと豆の間から出てくる豆の味がする塩水だと思うし、やっぱり枝豆はさやのまま出して欲しい。蟹も同じで、食べにくい殻のまま出されて、手が痒くなりながら頑張って殻に棒を突っ込んでほじほじして、やっと出てきた割には少ない実を口に入れてまたほじってこそ「蟹を食べる」と言えるのではないか。
 こういうことは食べ物以外のことでも言えると思う。わざわざ手回しで豆を挽くコーヒー、毎日ネジを巻いてセットしないと動かない懐中時計、足で思いっきり踏み抜かないとエンジンがかからないキックスタート式のバイク。そのひと手間はいらないと言われてしまえばそれまでだが、そのひと手間がロマンであり様式美なのだ。