みやけばなし

高円寺でギター弾いてるやつの日記

鉄のフライパンになりたい(2023年2月5日)

 鉄のフライパンは、使っていると汚れが付着してだんだん錆びていく。しかし、洗って汚れを落としてやすりで磨いて加熱して油を塗ると、とても美しい青銀色のような玉虫色のような色になる。買ったばかりのときは黒いコーティングがされていたが、使っていくにつれ剥がれたので、買ったときと今では色が全然違う。取れない汚れや傷も多少あるが、今の方が買った時よりもずっと使いやすいし美しい。

 

 同じように、年齢を積み重ねることでしか出せない美もあるのではないかと思う。肌は若いときの方が綺麗だとしても、外見の全てを若いときの状態で一生維持するのが良いという風には思わない。芸能人は最初に売れたときの見た目を維持しないといけないから大変だなあと思う。

 

 人間はどんなに良いものを食べて健康に気を使っていても、排泄物は汚いし、排水溝にヘドロが溜まる。合理性を求められる状況が続くと「部屋が散らかるのは同線が整理されていないから」とか、「仕事で不具合が起きるのは仕組みに問題がある」という風に考えてしまいがちだが、生活を回していればゴミが出るのは仕方がなくて、定期的にきれいにすればそれでいいのではないか。というより、生活の中で錆びてはそれを磨いていくという繰り返しが生きるということなような気もする。

 

 職場でペットの話になったとき「ペットはいないですが、鉄のフライパンは育てています」と言ったら、話があまり盛り上がらなかった。鉄のフライパンは鳴かないが、エサを食べるしうんちもするし成長するので、ペットと言っていいと思う。ただ鉄のフライパンは死なないので、そこだけがペットとは言い難い部分かも知れない。私は、鉄のフライパンになりたい。