みやけばなし

高円寺でギター弾いてるやつの日記

人生と花見の回数(2023年3月12日)


 人生でとれる食事の回数に限りがあるのが残念でならない。80歳まで生きるとすると365日×80年×3食で87,600回食事をすることになるが、この世にある飲食店の数や美味しい食べ物の種類は半端なく、日本だけに絞ったとしても到底こんな回数では制覇しきることはできないだろう。漫然と生きていると何となく無限に生きていられるような気がするし、食事も無限にとれるような気がしてしまう。職場近くの定食屋で毎回同じメニューを頼んでいる場合ではないという気がしてくる。

 

 もっと少ないのが花見のできる回数である。人生を80年だと仮定すると、単純計算で80回の春を迎えることになるが、桜の時期にうまいこと休みがとれるか土日がぶつかる確率、その休みの日に雨が降ったり前日に大風が吹いて桜が丸禿げになったりするリスクなどを考えると、人生でベストタイミングな花見をできる回数なんてせいぜい10回くらいではないかと思う。

 

 ひと昔前に、神聖かまってちゃんのの子が西川貴教との対談をドタキャンしてきゃりーぱみゅぱみゅと花見に行っていたというのが話題になっていた。西川貴教のファンは当然怒っていたが、私はの子の判断は限りなく正しいと思った。人生で花見に行ける回数は少なすぎる。来年は目が見えなくなっているかもしれないし、外を出歩けなくなっているかもしれないし、そこに桜はないかもしれないし、一緒に行ける友人や恋人とは疎遠になっているかもしれない。花見の時期はそのことをぜひ意識するべきであり、穴倉にこもってオヤジの話を聞いている場合ではない。

 

 今年も桜の季節になった。私が東京で一番桜が美しく見える場所だと勝手に思っている、国立高校前の歩道橋へ行く頃である。国立は完全に人工的に整備された街なので、道路が「木」の字に走っており、その幹にあたる大学通り沿いに国立駅から谷保駅までぞろぞろと桜が植えられている。どちらの駅からも遠いので人に勧めにくい場所ではあるが、大学通りからどこまでも続く桜並木が左右対称で間違いなく絵になるので、気になる人は行ってみてください。