みやけばなし

高円寺でギター弾いてるやつの日記

じゃあ〇〇食えば理論(2023年8月13日)

LINEでよく流れてくる広告に「まるで白桃のような日本酒」というのがある。白桃が食べたいなら日本酒なんて高いもの買わずとも白桃を食えば良い、のだろうか。

堅揚げポテトだだちゃ豆味を前に、食べているときの自分の感想を想像してみる。「もっと枝豆の味がして欲しかったな〜」と思う。じゃあ最初から枝豆を食べた方が満足できるし身体にも良いのでは?と考える。かくして堅揚げポテトだだちゃ豆味が私に買われることはない。

高田純次の迷言に「ジューシーな肉を食べたい人は、肉を食べてジュースを飲んだらいいんじゃないの?」というのがあるらしい。さすがにそこまでいくと極端だが、ワインに果物を入れて飲むサングリアという酒があるのであながち的外れともいえないと思う。

また、カツの代替えとしてビッグカツ(駄菓子)、蟹の代替えとしてカニカマなどもまあ理解できる。元ネタの食べ物が高いので、少ないお金で高級食材の風味だけでも味わおうという魂胆だ。堅揚げポテトだだちゃ豆味もこれに類するのかもしれない。

「じゃあ〇〇食えば」と言われてしまうリスクは、この元ネタと模造の価格設定が逆転している際に発生する。白桃の味がする日本酒、豆腐の味が濃いティラミス、出汁の味がする高級玉露などは「わざわざ高い物を食べて安いものの味がすると言ってありがたがっている」ということに滑稽みが生まれてしまうのだ。

だが考えようによっては、これらの食べ物は「安価な材料で高級な味を」の真逆をいっているという点で、非常に贅沢な品だともいえるのではないか。高級な食べ物だからこそ、安価な物が持っている普遍的な美味しさを忖度なしに取り込めるのだ。仮にポテトチップスの味がする日本酒を作ろうとしたら途方もない金がかかるし、ほとんど売れないだろうから値段はものすごく高くなるだろう。しかしポテトチップスの旨さを本気で日本酒に取り入れることに成功したら、その日本酒は間違いなく旨い。

ここまで熟慮してもなお、冒頭の「白桃の味がする日本酒」を私が購入する予定はない。最近桃を食べたときに目や口の粘膜がイガイガするようになってきてしまったが、桃アレルギー程度では4万円もする日本酒の購買ハードルまで届きそうにもない。桃が食べたくて死にそうになったら加熱済みの缶詰だのたらみのゼリーだのを摂るだけだ。所詮私はその程度の庶民である。