みやけばなし

高円寺でギター弾いてるやつの日記

やりたい人>見たい人(2023年12月17日)

 

先日X(旧Twitter)にてこのようなPostがバズっており、そうなのか、と思うと同時にPostについていた反応が多種多様で面白かったため、ざっとコーディングしてみた。

 

1.「観たい人が全然いない」理由

1-1.演劇に触れる機会がない
・メディア露出が少ない
・親が観ないと子供も観ない
・小学校で思想の強い劇や政治的な劇を観せられて印象が悪くなっている
・学校の演劇部の酷い自己満劇を観せられて印象が悪くなっている

1-2.観に行く理由がない
・推しがいないから
・興味のある演目がない。変に個性や思想が強いのしかない。劇団四季などの有名な劇団や2.5次元とかなら見たい
・知らない人の自己満に金を払いたくない

1-3.鑑賞の仕方がわからない
・ドラマや映画とは違う独特な表現技法がわかりにくい
・小学生以来観ていないので、観てもわからないと思う
・バンドのライブは知らないバンドでも盛り上がって楽しめるけど、演劇はそういうのでもないからよくわからない
・高尚な感じがする。思想が強すぎて解釈の余地がない感じが嫌
・観て感想を抱いてもそれを共有できない(レビューサイト等がない)

1-4.アクセスが悪い
・劇場が東京にしかない。地方にはほとんどないし、どこで観られるかも知らない
・観劇料が高い(一回数千円)
・上演期間が短い、回数も少ない

1-5.タイパが悪い
・レビューサイトがなく事前の評判がわからない。あらすじがパンフやポスターにない
・何が出てくるかわからないものに数千円も払って1時間以上椅子に拘束とか無理
 ネトフリやYouTubeなら家で見られるし、つまらなかったらすぐ別の観られるし、追加料金も取られない
・クオリティがピンキリすぎる

2.業界への批判

2-1.演劇界隈そのものが芸能界への中間地点に過ぎない
・金持ちや芸能人が道楽で金を出し、芸能人になりたい若者を搾取している
・演者側も本当は演劇でなく映画やドラマに出たくてその通過点としてやっているだけで、演劇自体に興味はないから。自分の芸を磨くためになるなら他人の劇も観るが、演劇自体は好きではないから

2-2.演劇界隈が閉鎖的
・観に来てくれた代わりにその人の劇も観に行って内輪で互いに絶賛し合う文化
・内輪ノリが寒い

2-3.承認欲求を満たしたくてやっているだけ
・何者かになりたい、表現したいだけで見る人のことを考えていないから
・演技自体は簡単な一方、鑑賞に耐えるだけのクオリティに到達するハードルが高い

2-4.劇団員が育つ土壌がない
・勉強の仕方がわからないし確立されていない。事務所や養成所に入るしかない
・良い演技とは何なのか定義が不明瞭

2-5.利益を出せるビジネスにするのが困難
・スタッフの人件費や場所代、小道具代等が高い
・一回の上演時間が長いのでバンドでいう対バンみたいなことがしにくい
・TVや自治体があまり金を出してくれない
・有名な芸能人は下手な演技をインプットしたくないから無名な演劇は観に来ない
・POP音楽などと違い「こうしたら売れる」という売れ線もない
・アイドルやモデルを起用して外部から客を呼ぼうにも金がかかる
・結果身内で回すか、美人を集めてアイドル営業をさせてグッズで儲けるしかない

 

3.演劇そのものの問題

3-1.日本の演劇の問題

・そもそも日本は歌舞伎や能など音楽劇の国で会話劇は西洋から来たもの
・日本の演劇はアートに寄りすぎていて変
平田オリザのせい(複数人)

3-2.演劇自体の問題
・映画の下位互換
・身振り手振りが変に大げさだったり、小声で話すべきところでマイクを通すために声を張ったり、不自然で没入できない。見ていて恥ずかしくなる
・役者の緊張や言いよどみなどちょっとしたことも伝わってきて神経が磨り減る
・脚本が決まっている劇をわざわざ生で見るメリットがわからない

4.その他

4-1.私(私の周り)はそんなことはない

・演劇をやっている人は他人の劇も見たいし見に行ってます

4-2.演劇に限らず何でもそう
・〇〇もそうだよ(小説、絵、音楽、スポーツ等)
・「やりたいこと」と「見たいもの」が違うのは当たり前
・演劇もカラオケみたいに演じたい人が演じられる体験型消費ができれば良いのでは



(総括)

「やりたい素人の方が見たい人よりも多い」という傾向は演劇以外でも普遍的に見られる傾向だが、特に演劇の場合それが顕著であるように見えるのは「他人になりきってスポットライトを浴びる」という娯楽の代替えがない一方で、「他人になりきっている人を見る」娯楽はいくらでもあるからではないか。

 私は演劇をやっていないし観にも行かないのだが、この話はライブハウスのミュージシャンにも言える気がしてどうしても気になってしまった。インターネットやSNSの普及で趣味を始めるハードルが下がり表現の場が増えた一方で、手軽に上質な娯楽を手にする手段も増え、「やりたい人>見たい人」の傾向はどの業界でもますます強まっていくと思われる。ということは、そのギャップを埋めるための体験型消費のサービスのニーズも増えていくのではないか。VRで大人用キッザニアみたいな総合施設を作って、「劇団員体験」「ミュージシャン体験」「サッカー選手体験」みたいなのを一日でいろいろ試せるようにするとか。もしそれで実際にやってみたいと思ったら実際に始めてもいいし。老後の趣味選びとかにも良さそうだ。